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 さびしんぼう
   監 督 :大林宣彦
   出 演 :富田靖子、尾美としのり、藤田弓子、樹木希林、
   ジャンル:ファンタジー
   1985年  日本


 大林監督、尾道三部作の最後。
 
注)以下、ネタバレだらけです!

【あらすじ】
 寺の息子・井上ヒロキ(尾美としのり)は、カメラの望遠レンズで女子高校を覗いていて放課後の音楽室でピアノを弾いている美少女=橘百合子(富田靖子)を見つけたものの、まだ遠い存在でした。
 ある日、掃除をしていて古い写真をばらしてしまいますが、それ以来白塗りでオーバーオールを着た女の子=自称“さびしんぼう”(富田靖子・二役)が突然現れいつの間にか消え失せるようになります。
 彼女は、実は片付けそこなった古い写真の中から飛び出した高校二年生のヒロキの母でした。
 ヒロキはちょっとしたことから百合子と言葉を交わすことができプレゼントのオルゴールを渡して想いを伝えることができますが、彼女は母を亡くし病気の父を抱えて困窮した生活を送っていたため、ヒロキに「もう会わない」と言います。
 それは明日が母の誕生日と言う夜の事でしたが、雨の中暗くなって帰ってきたヒロキを、家の前でずぶ濡れになってさびしんぼうが待っているのです。
 彼女を邪険に扱う事もあったヒロキですがその様子に思わず自分の上着を脱いでさびしんぼうにかけてあげます。
 でも、さびしんぼうは16歳であり17歳ではいられません。
 さびしんぼうはヒロキの腕の中で消えてしまいます。

 後日談として、ヒロキが大人になって本堂でお経をあげていますが、その後ろに彼の奥さん、そして隣室では百合子そっくりの娘(富田靖子の三役目)がピアノの練習をしているのですが、ピアノの上にはあのオルゴールがあるのでした。


【感想】 
 尾道の方には懐かしい風景がボロボロ現れるでしょう。
 私も昔千光寺公園の上のY.Hに泊った事があり、思い出深い土地です。



通学で百合子が使っていたフェリー。


 尾道の夕景色が美しいです。
 主演の富田靖子さんは所々、演技じゃない素の部分が出ているようでおもしろいです。
 古い映画で、邦画特有のわざとらしさや、いらないエピソードもちりばめられていますけれど、どこか見る者の心に訴えるものがあります。
 もう戻ることのできない時代への郷愁もあるのでしょう。
 いえ、若くてもこの不思議な感情には共感できると思います。

 若い頃の自分の母親が目の前に登場するのは珍しいですね?
 監督は、もうすぐ富田靖子が冬休みなんでなんか撮りませんか? と持ちかけられたそうですが、この映画はもしかして高校の冬休み中に撮っちゃったアイドル映画なの?


  2018.10.    ................ 傑作映画館の目次ページへ